つらつらと、つらつらと

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【読書メモ】2時間でおさらいできる日本史

1.「2時間でおさらいできる」シリーズ

本書は、前回紹介した「2時間でおさらいできる世界史」とはタイトルは似ているものの、違う著者のもの。まあ当然と言えば当然。著者石黒拡親さんは早稲田予備校河合塾の講師とのこと。

本書は、(というよりこのシリーズは、といった方が正しいと思う)歴史を線(流れ)で理解すると言うより、点で理解するための本。各トピックはポイントを押さえていて分かりやすい。なので、教科書のおさらいをするには最適。一方で、歴史好きが歴史を学ぶにはちょっと不適かな。同シリーズでは他に中学理科があるらしい。 

とはいえ、世界史とは違い、日本だけで完結するため分かりやすい。これはどうしても日本史と世界史の特性の違いかな?

旧石器時代から現代までを文庫本の269ページでまとめているので、テンポが速い。特に明治以降の部分は、政治史を中心にしてあっという間に進む感じ。

 

2.筆者のメッセージはココか?

本書を読んで自分が一番のメッセージと感じたのは、次の部分。

天皇権威を高めようとしたことは、修史事業にもあらわれている。6世紀にできた「帝紀」「旧辞」には誤りがあるとして、正しい歴史書を作れと命じたのである。これはやがて「古事記」や「日本書紀」に実を結ぶことになるが、その内容だけを真実だと鵜呑みにしたのでは、天武天皇の思惑どおりだろう。本当に正しい歴史というより、天武天皇にとって都合のいい歴史に違いないからだ。(P40)

続日本紀」は正史ではあるが、藤原氏の権力下で編纂されたものだ。そのまま鵜呑みにしたら藤原氏の思うツボにはまってしまう。(P50)

2カ所で言っているのだから、相当思い入れがあると思う。

史書というのは、当然ながらそのときの権力者が作らせるものなので、権力者に都合の良いことが書かれる(はず)。失脚させられたり、滅ぼされた側の主張は記載されない。

現在は新聞やテレビだけではなくインターネットなどで、様々な角度からの情報を入手できる時代。お医者さんでもセカンドオピニオンと言うことが言われている様に何にしても複数の目線からの検証を心がけたい。ただ、情報を入手しすぎて迷ってしまわない様に注意したい。

 

3.デリケートな話題も

デリケートな話題も2カ所断言。

手近にある日本史の中学教科書(東京書籍)では・・・。前者については同様の内容で記載されているが、後者は記載なし。

とはいえ、前述の様に「鵜呑みにしたら…」と書いているのに、ココはどこぞの発表を鵜呑みにしている様な気がする。著者の見解かもしれないけど、それならそれでそのように記述するか、異論があることも書いておいて欲しかったと思う。

 

4.ココが変わったぞ!

自分が学生時代に習った歴史と、今の学生が習っている歴史には違いがある。

例えば、「仁徳天皇陵」と習った古墳は、今は「大仙陵古墳(伝仁徳天皇陵)」だったりする。(P33)

また、幕府が開かれたとする年も変わっていて、現在は諸説あるみたい。

鎌倉幕府 - Wikipedia

室町幕府 - Wikipedia

江戸幕府 - Wikipedia

本書では、幕府が開かれた年代は明記されておらず、源頼朝徳川家康征夷大将軍に任ぜられた年が書かれているのみ。足利尊氏は年すら書かれていない。その辺、ちゃんと断りを入れてもらった方がわかりやすいと思うけど。

 

5.まとめ

教科書レベルのおさらいをするならおすすめの本書。

ただし、一部記述に、意図的なのか意図しないものなのか分からないけど、諸説あるウチの一つが記載されていたり、ぼやかして記載されていたりするのでご注意を。