つらつらと、つらつらと

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【読書メモ】定本 百鬼夜行-陽,陰

太平洋戦争前後の日本が舞台の京極堂シリーズではあるけど、京極堂が出てきて憑きもの落としをするのではなく、それぞれトラウマや心の闇を持つ別々の主人公の物語の短編集。陽と陰でそれぞれ10エピソードが収録されて上下巻扱い。

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とはいうものの、榎津礼次郎の特殊能力と、自身が運営する薔薇十字探偵社の由来を公開するなど、中には京極堂、榎津、関口などのシリーズレギュラー陣が登場するエピソードもある。

主人公の心に棲む妖怪の物語の形式でありながら、著者の"鬼"観、"宗教"観、"ジェンダー"観等を展開刷るエピソードも。

物語は例によって陰鬱な仄暗いイメージ。でもほかの京極堂シリーズと同様、本書も単文を連続させて主人公の心情を表現する京極節が炸裂しているので、京極ワールドに引き込まれてしまう。

ハッピーエンドはないので読んでていたたまれなくなる。でも読まずにはいられないというか・・・。京極堂ファンであれば読む価値ありです。