ロシア幽霊軍艦事件
この作品は、御手洗シリーズだけどいつもとは毛色が違う。いわゆるミステリとしての殺人事件は起こらない。とは言うものの、歴史の謎というミステリにフィクションを織り交ぜながら踏み込んでいる。どちらかと言うと、同著者の「三浦和義事件」のフィクション版のようなイメージか?
- 作者: 島田荘司
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2004/10
- メディア: 文庫
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ロマノフ王朝の王女アナスタシアの謎を追うストーリー。勉強不足でアナスタシアと言う言葉はどこかで聞いたことがあったけど、それがロマノフ王朝の王女だったとは知らなかった。ロシア革命のときに処刑(というのか、虐殺というのかわからないけど)されたはずだが、その痕跡が残っていないと言うことは当然知らず。あとがきで著者が、どの部分がフィクションだということを明記しているので、歴史の勉強になった。
物語は松崎レオナから御手洗・石岡に届いた手紙から始まる。その内容は、レオナの出演しているラジオ番組のリスナーからのファンレターの調査依頼だった。そのファンレターとは、日本の老人(ファンレターの送り主の祖父)がアメリカのある町に住む女性に、ベルリンでの出来事を謝罪したいと言うことを伝言してほしいと言う内容だった(ややこしい)。しかしその女性は変人でその町では有名になっていたが、既に亡くなっていた。しかも依頼者の老人も、ファンレターの送り主も亡くなっている。一方、レオナから情報を得た御手洗・石岡は、その女性が自分がアナスタシアだと主張しているということで、ロシアつながりの、箱根にある富士屋ホテルを訪問する。そこで偶然目にすることができた幽霊軍艦写真(芦ノ湖のある桟橋にロシアの巨大軍艦が寄港している写真)の謎にも足を踏み入れることに。ここまでが起承転結の起の部分。後は面倒なので省略。
それにしても、戦争(この場合は革命だけど)は、人間の醜い部分が出るもんだと。主人公が主人公だけに、そういう物語の作り方になるとは思う。そこを割り引いたとしても、戦争はダメだねえという印象。
石岡君はどうも京極夏彦の京極堂シリーズの関口巽とイメージがダブってしまう。ダメダメ度は関口巽の方が上だけど。